開 発

【 金型修正 】
T1(第1回試験成型)では実際の金型の仕上がり具合を確認する目的で成型が行われますが
射出に対する樹脂の流動性などもこの時に確認されます
プラモデルのように1型あたりに多くの複雑なパーツが配置されているようなものなどは特に樹脂の流動性は
重要なチェック項目になります

樹脂が型に回り切らない(ショート)というような事が無いか
ゲートのそばにウェルドが発生していないかという事は特に問われるポイントになります
射出成型の場合、成型機から金型へ樹脂を注入する箇所は1箇所で、熱せられ液状になっている樹脂を
強力な圧力で注入し樹脂が冷えて硬化した後に金型を開き成型品を取り出す訳です
その時に樹脂の通り道(ランナー)が複雑であれば全パーツに樹脂が行き渡る前に硬化しショートが発生します

プラモデルのパーツには複数のゲートがあるものがありますが複数のゲートから樹脂が進入すると
冷え始めた樹脂がパーツ内で合流する事になります
そうして成型されたパーツは見た目は普通のパーツですが衝撃に弱くパーツを切り出す時に破損し易くなる
というような事が起こります
そうした状況を回避するためにはゲートを追加し、樹脂の流入が早くなるようにするといった対処が採られます

金、銀といった成型色の場合、パーツ表面に樹脂の流れが模様として見えるものがあります
ウェルドラインと呼びますが、これは樹脂に金属色を出すために混入してある粉末が均一にはならないために
生じるもので、普通に取り扱う分には強度等に問題はありません

と、前項の補足をした上で、今回の修正について

T1で実際の成型品を前にすると設計段階では気がつかなかったことが諸々生じてきます
この段階で企画段階での仕様を踏まえチェックを行います
修正の度合いが少なければ比較的早く金型は仕上がる訳ですが
修正点が多ければ当然金型を修正しては試験成型をし確認、という作業が何回も繰り返される訳です
T2、T3と、修正〜試験成型を繰り返した後にTE(エンド)となり型上げとなります

今回ホルテンとトリープフリューゲルに関しては特に問題は無かったのですが
P1101とTa283にはちょっと面倒な修正が入りました

【 P1101の修正 】
シリモチっす 主脚の角度に注目
航空機モデルの泣き所のひとつがテールヘビーによるシリモチで、本機はみごとにお尻をこすってしまってます
プラモデルならば問答無用で「おもりを入れて下さい」の一言で済ませるのですが
完成品モデルである本機の場合やはり放置は出来ません

メーカーさんの担当者氏と相談の結果、主脚の取り付け角度を微妙に変えれば何とかなるんじゃないか・・・
という事で本体の取り付け位置はそのままに、主脚側の差込みピンの角度を調整し何とかおもり無しで
自立出来るようになりました
どれくらい角度が変わったかは上右画像を御覧頂くとはっきり判ると思います

「あのぉ、もうひとつ面倒な修正があるんですけど・・・」という川口の発言に曇り顔の担当氏
実はキャノピーなんですけどね・・・
ここ、クリアに・・・ 栄進堂さんに感謝
オーベルアムメルガウのハンガーで米軍に捕獲された試作1号機の記録用写真では
操縦席後方は透明ではないのだが、米本土に移送、調査された後の機体として残されている同機の写真では
操縦席後方も透明になっている
え???
と思い、資料を漁っていくとMe社の図面などからみるとどうやらクリアらしい・・・

「け、検討します・・・」と暗い表情を浮かべた担当氏
金型修正の場合、金型に直接掘り込む凸モールド方向の加工は比較的(あくまでも比較的)容易なのだが
凹モールド方向の加工は困難で、場合によってはそのパーツのコマを作りさなければならなくなる
(ちなみにひとつの金型は1個の金属の塊で出来ている訳ではなく
 パーツ毎のモールドが掘り込まれたコマと呼ばれる金属のブロックを組み合わせて構成します)

肩を落として帰っていく担当氏の背中を見つめ心の中で拝む川口ではありました

そして翌日「やります!」という心強い担当氏からの電話
その成果が上右の画像ではあります

OKっす!!
という事で、威風堂々のP1101ではあります
手前の主翼端に傷のようなものが見られますが、これは接着剤が着いた跡なので
製品時には全く問題ないということを付け加えておきましょう


【 Ta283の修正 】
こちらも予想通りテールヘビーでシリモチ
他の部位については問題ありませんが、ここはヤッパリ何とかしないと・・・
という事で担当氏から提案されたのが機体後半部の軽量化
予想通り・・・ 肉ヌキ
当初の設計ではラムジェットエンジンの2つの樽はそれぞれスライド型を使って1パーツで成型する予定でした
T1ではまさにその状態であがってきた訳ですが、この樽を上下割りにして樽の肉厚を薄くし、
その分重量を軽減するという案が立てられました(上右画像)

フーマモデルの1/72を組んだ川口的にはそれでも多分ダメだろうと思っていたところやっぱり焼け石に水
散々悩んだ末におもりを入れるという最も原始的な方策を採ることにしました
おもり入れちゃいましょう OKでつ!!
幸いにして「ここにおもりを入れてくれ」とばかりの長大な機首を持つTa283
機首の空間に収まるサイズの鉄芯を入れる事でテールヘビーに関する問題はクリアされたのでした

ところで、何でそんな簡単な、と言うか模型では当たり前の策を講じるのに悩まなければならなかったのか
ひとつは鉄芯という部材を入れる事でのコストアップの問題
商品状態では分解はほぼ不可能であるため、鉄芯の固定をしっかりしておかないと不良率が高くなるという点
そして、鉄芯を入れた場合径時によるさびの発生が懸念されるという点がイマイチ踏み切れない理由でした

コストの方は試算上何とか吸収できるという目処が立ち
固定についても切り出した鉄芯の長さにバラツキはあるものの機体上下パーツから固定用のリブを立てる事で
対応し、さびについては鉄芯にメッキをかける事でさびの発生を防ぐという対処が立てられ
それじゃぁ、鉄芯のおもりで行こうという事になったのではありました

ワンオフのモノ作りの場合ではなんでもない事も、商品という量産品を作る場合では
ちょっとした事でも大きな障害となる訳です


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